十勝勤医協の医師研修

はじめに

 十勝勤医協は、1985年、「十勝に勤医協の病院を」という地域の皆様の熱烈な運動と北海道民医連の支援のもとに設立されました。19床の診療所から出発し25年を迎えた現在では、帯広市を中心に1病院、2無床診療所、1老健施設、1訪問看護ステ-ション、居宅介護支援事業所を展開し、地域に根ざした医療、福祉、保健を実践しています。

 十勝勤医協の研修では、地方の医療現場で働くことを経験し、地域での医師の役割や地域住民の思いや期待の大きさを肌で感じることになるでしょう。また、研修を通じて「自分が目指す医師像」を考える機会にもなると思います。

 患者さんの思いに寄り添い、全人的に診ることができる医師を目指した研修をすすめます。

内科後期研修プログラム

 研修目標については、北海道民医連が設定する中規模研修病院における共通目標と、帯広病院で設定した行動目標を併用して研修をすすめます。

後期研修プログラム1:一般目標・行動目標(北海道民医連統一)

A 人権を守る基本的、総合的な診療能力(主治医能力)を獲得する

 患者に対して様々な角度から継続的に関わる事で、主治医能力すなわち総合的診療能力 を獲得していきます。この際高齢者医療、在宅医療、成人病と慢性疾患の継続的管理について配慮が必要です。

B 患者の立場に立つ民主的医療を実践する能力を獲得する

 患者の問題解決の場面だけでなく、病棟、各種委員会、共同組織、医局などの様々な組 織・集団でチームリーダーとして関わる事により、民主的医療集団医療を実践する能力を 獲得します。

C 医療の社会性を学び、医師の社会的役割を自覚し、医療変革を追及する視点を獲得する

 患者さんの社会的問題を見出し、患者本人、家族、共同組織、地域医療機関、自治体と共同し問題解決を目指します。

後期研修プログラム2:研修の特徴

後期研修プログラム3:研修方法

病棟医療

GIOs
  • ○地域の一般内科病棟患者の主治医として診療を担うことができる。
SBOs
  1. 一般内科疾患に対する適切な入院治療ができる。
  2. 高齢患者に対する適切な治療とケアマネジメントができる。
  3. 認知症、緩和ケア、終末期医療を適切に行える。
  4. 退院後の療養上の問題点を整理し、連携担当看護師、相談員なとど連携して対応することができる。
  5. 疾病以外にも困難を抱える患者について、退院後の療養上の問題点を整理し、介護・福祉事業との連携をとり、スタッフと協力し問題解決のプランを作成することができる。
方法
  • ○一般病棟の入院患者の主治医となる。

外来医療

GIOs
  • ○地域の一般内科の外来患者の診療を主治医として継続して担うことができる
  • ○リウマチ科、耳鼻咽喉科、労災科の診療を体験し、理解することができる。
SBOs
  1. 日常的に起こる疾病に対して適切な診断、治療の初期対応ができる。
  2. 疾病予防のための慢性疾患管理を適切に行える。
  3. 地域の状況を理解し、その特徴及び地域の医療要求を列挙することができる。
  4. 病院の機能や患者の希望を考慮し、入院適応や他院への転院の判断を適切に行うことができる。
  5. リウマチ科、耳鼻咽喉科、労災科の診療を学び、経験してその基本について述べることができる。
方法
  • ○常の外来診療や夜間診療を行う。一般病棟の入院患者の主治医となる。
  • ○リウマチ科、耳鼻咽喉科、労災科の医師の診療を見学する。

在宅医療

GIOs
  • ○地域の高齢者を中心とした在宅療養が必要な患者に対して、スタッフと協力しながら継続して診療を行える。
SBOs
  1. 在宅でよく起こる疾病に適切に対応できる。
  2. 経管栄養、褥瘡管理など在宅での指導、管理に習熟する。
  3. 在宅患者の状態悪化時に適切な対応ができる。
  4. 障害の評価、対応、必要な介護サービスの判断を行い、サービス提供者に医学的な指導を行うことができる。
  5. 各意見書を適切に記載できる。
  6. 患者、家族、介護者への心理的なサポートができる。
方法
  • ○訪問診療を行う。
  • ○臨時の往診に対応する。
  • ○在宅患者カンファレンスに参加する。

健診、保健予防活動

GIOs
  • ○地域の労働者、成人、高齢者の疾病予防、健康増進に関わることができる。
SBOs
  1. 労働者、成人、高齢者の健診によるスクリーニングを行える。
  2. ハイリスクグループに対する健康教育を適切に行える。
  3. 地域の要求に応え、健康相談会等の講師を務めることができる。
方法
  • ○健診の診察を行う。
  • ○健診の結果判定を行う。
  • ○健康相談会等の講師活動を行う。

技術研修

下記の技術研修については、研修医の希望に添って行います。

プロジェクトワーク

後期研修プログラム4:研修評価

研修委員会

 研修内容、評価について研修医委員会が責任を持ち運営します。委員会は研修医と指導医を含めた多職種で構成し月1回開催します。設定した目標の達成状況や研修への要望など、委員会で議論しすすめます。

指導医体制

 プログラム責任者1名、指導医複数名を置き、日常的な意見交換とプログラムのチェックを適宜行います。指導医は全体責任者の他に、病棟医療、外来医療、在宅医療、健診で各々担当者を決めます。医師以外の委員も担当分野を決め、研修がスムーズに行えるようサポートします。

評価ツール

 評価については、毎週のレポートとフィードバックを中心に行います。その他にポートフォリオ、多職種による360度評価、指導医による研修医の診察場面の観察とフィードバック、受け持ち患者の定期的なプレゼンテーションとカンファレンスなど研修医にとって重要と考える出来事の事例分析なども行います。

以上